HOME >> 出版  >> 朝日作曲賞  >> 朝日作曲賞受賞者紹介 >> 森田花央里
 


森田花央里
Kaori Morita

=2013年度・第24回朝日作曲賞受賞=

東京藝術大学作曲科卒業。第24回朝日作曲賞、第1回ハンナ作曲賞。
《鐘》:2014年度全日本合唱コンクール課題曲。
《草の夢》:男声合唱団 東京リーダーターフェル1925 創立90周年記念事業公募最優秀作品。

◎近作 :《春の手》(教育芸術社) / 組曲《三味線草》(ブレーン) /《石像の歌》(CANTUS ANIMAE, Chorsal) /
児童合唱組曲《くまモン》(熊本県立劇場, 全音楽譜出版社) /《歳月》(舫の会, 音楽之友社)/《Song Circle, “Japonism and Jazz”》(神奈川県立音楽堂, 東京混声合唱団) /バンド維新2020-2021 / 《はじまり》(森野美咲, 東京オペラシティB to C)/《風の記憶》(同名CD)が、東洋ライス「金芽米」CMに起用。/など。

編曲提供:harmonia ensemble a cappella collection, 山田和樹アンセムプロジェクト, 心に花を咲かせようプロジェクト(KING RECORDS) / IL DEVU, SiriuS (日本コロムビア) / Vn.宮本笑里, Vla.川本嘉子, Pf.佐藤卓史(Sony Music) / Vn.寺下真理子 / BS TBS 名曲アルバム/ BS朝日 子供たちに残したい美しい日本のうた /アンサンブル金沢, 名古屋フィル, 日本フィル, 関西フィル(オーケストラアレンジ)/など。

ジャズピアノを、故・辛島文雄の師である故・田村勝哉氏に師事。ジャズピアニストとして、舞台「祝女〜shukujo〜」season2にて、YOUと共演。室内楽、合唱のピアニスト、ジャズ・弾き語り、歌手のサポート、バンドマスター、キーボーディストとして、ポップスやクラシック、様々な演奏スタイルをこなす。

1987年、大分県生まれ。大分県立大分上野丘高校音楽部(合唱)OG。
日本語、英語の作詩も行う。


ホームページ https://kaorimorita.net

● ● 作品リスト ● ●

https://kaorimorita.net/menu/works/

 

● ● 朝日作曲賞受賞曲 ● ●

混声合唱とピアノのための組曲
「青い小径」
(竹久夢二 詩)

 鐘/花火/ゆびきり/あなたの心

* 2014年度全日本合唱コンクールの課題曲に「鐘」が選ばれました。
こちらのWEBサイトから全曲演奏をお聴きいただけます。

 

● ● 受賞のコメント ● ●

美しき病、戀の細道、「青い小径」

 幸運なことに、朝日作曲賞をいただき、とてもうれしく思っております。すべての方々に、私は導かれたように感じ、心から感謝しております。
 ― 人は一度この小径をゆけば、もはや再び帰らないだらう。―
 詩集『青い小径』の冒頭に、夢二はこう書いています。
 組曲のために私が選んだ詩のほかにも、いくつもの詩があり、彼の美人画と似ていると思うのですが、口数は少なく、伏し目がちに私たちを見て、詩は紐解かれるのを待っています。
 「帰らない」のは、かなしいことなのか、見送るべきことなのか。
 夢二の詩は、あたたかいのにつめたくて、やさしいのにかなしくて、諦めているのに願い続けている。セピア色のように、もの静かなのに力があるのは、そこに真実の一つがあるから。時が経っても、いつの人の世も変わらぬ眞實(まこと)であるから。
 夢二は生涯、聖書を持ち歩いていたそうで、殉教者の眼差しから、東洋的、仏教的な思想、西の國へのあこがれまで、垣間見えます。
 彼の詩のなかの、美しき病に罹った女たちは、決して大人になることはありません。
 子どもが年をとるだけのように、女のなかに幼き君は生き続け、孤独がもたらす寓意の中を、今も生き続けています。
 そのうつくしきもの、はかなきものを、私は音にしたいと思いました。詩が言いたがっていることは何だろうと考えて、それはとても、「音楽」に似ていました。たしかにここにあったのに、手にとることができないのです。
 ―うつくしきものはなべてはかなし。―
 それでもそれをたしかめたくて、人は歌ったり、ヴァイオリンを弾いたりするのだと思います。
 いつのまにか置いてきてしまったもの、なくしたもの、蓋をしたかなしみ、簡単に言葉にはできないけれど、夢二と一緒に、曲にすることができる気がしました。
 私の曲を、夢二が赦してくれることを願うばかりです。
 娘のような「青い小径」を、みなさんに歌っていただけたらと思います。

全日本合唱連盟会報ハーモニーNo.167(2014年1月号)掲載