教会暦のはなし

10月の声をきくと、次の年のカレンダーがちらほらと出回るようになる。新しい年への期待まじりに、つい手にとってみる。十二節、旧暦、月の満ち欠け、季節の行事、暮らしの知識などいろいろ、楽しい。

日々の情報といえば、カレンダーではないのだけれど、この2年ほど手元において親しんでいるものがある。「キリスト教歳時記」(八木谷涼子著)。キリスト教の主要な祝祭日や記念日が月ごとに紹介されている。

11月のページをのぞいてみよう。


◆死者の日(11月2日)All Soul's Day; Commemoration of the Faithful Depatted
[希正× 露正× カト○ 聖公○ ルタ△ プロ×]

主にローマ・カトリック圏において、死者のためにミサを捧げる日。
諸聖人の日と異なるのは、あちらがすでに天国にいる信仰の先達を記念するのに対し、こちらはまだ天国に至っていない、つまり煉獄にいる(かもしれない)死者のために祈る日であることだ。死者は天国に行く前に煉獄で霊魂の浄化を待つ、そのために生者は死者のために祈るという観念は、ローマ・カトリック教会(および、聖公会の一部)に特有のものである。したがって、この日はとくに祝日とせず、前日の諸聖人の日にすべての死者を記念するプロテスタント教会もある。もともとは、イースター前日の聖土曜日がこれら死者のために当てられていたが、・・・キリスト教以前の時代からつづく俗信では、この日には先祖の魂がなつかしい我が家に帰ってくると考えられている。墓参することはもちろん、先祖のために食べ物をテーブルに残したり、部屋を暖めておいたり、墓石に聖水やミルクを注ぐ地方もある。・・・イングランド聖公会では、長くこの日を公式に記念することはなかったが、1928年版祈祷書で復活、2000年版の暦にも入っている。日本聖公会では諸魂日といい、この日にレクイエムを奉唱して、死者のために祈る教会もある。一般には、万礼節とも訳されている。・・・ブラジル、エクアドル、エルサルバドル、ハイチ、メキシコ、グアムなどでは法定休日。メキシコでは、一日と二日を死者の日として国を挙げての祭りが行われるが、これにはキリスト教受容以前からあった伝統的な祭と、アメリカ風ハロウィーンの影響が色濃く感じられる。人びとは死者のために黄色いマリーゴールドの花や供物を飾った祭壇をつくり、街にはユーモラスなガイコツのグッズがあふれる。・・・

「実際に教会でどんなことを祝っているのか、に比重を置いてみた」という著者。

宗教作品を知ろうとする際、教派による教義や礼拝様式などの違いに「?」となることも多く、西洋文化のベースとなる考え方としてのキリスト教について学ぶ必要を感じることがある。これは、その世界をより身近な感覚でとらえてみたいと思って選んだ一冊。具体的で理解しやすい解説に努める著者の姿勢も気に入っている。
冒頭に西方教会の期節と祭色、巻末にコンパクトながら適切な参考文献(ウェブサイト含む)、人名・見出し索引付き。

毎日の生活の何気ない時間に、まずは興味のもてそうなところからページをめくって。


みちしるべ

キリスト教歳時記 知っておきたい教会の文化(平凡社新書203) 八木谷涼子著 (2003, 平凡社)


初出:「ハーモニー134号2005年」2005.10.10発行/copyright(c)2005.Junko
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