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佐藤 拓 Taku Sato

=第5回アシスタントコンダクター=

早稲田大学第一文学部卒業。在学中はグリークラブ学生指揮者を務める。卒業後イタリアに渡りMaria G.Munari女史のもとで声楽を学ぶ。
World Youth Choir元日本代表。アンサンブル歌手、合唱指揮者として活動しながら、日本や世界の民謡・民俗歌唱の実践と研究にも取り組んでいる。Vocal ensemble 歌譜喜、The Cygnus Vocal Octet 、Salicus Kammerchor、Japan Chamber Choir、vocalconsort initium等のメンバー。東京稲門グリークラブ、日本ラトビア音楽協会合唱団「ガイスマ」、合唱団Baltu、東京ユヴェントス・フィルハーモニー合唱団指揮者。常民一座ビッキンダーズ座長、特殊発声合唱団コエダイr.合唱団(Tenores de Tokyo)トレーナー。
ソリストととして、古楽アンサンブル・アントネッロの『モンセラートの朱い本』、モンテヴェルディ『聖母マリアの夕べの祈り』の公演に出演。  声楽を捻金正雄、大島博、森一夫、古楽を花井哲郎、特殊発声を徳久ウィリアムの各氏に師事。


ホームページ https://contakus.com/ 

    



第5回JCAユースクワイア 
2016年3月8日(火)〜12日(土)福島市音楽堂
★Conductor Robert Sund(ロバート・スント/スウェーデン)
★Assistant Conductor 佐藤拓

 

  キャンプ中の3月11日の午後、信長貴富さんの『夜明けから日暮れまで』を震災犠牲者への献歌として捧げることにしていましたが、ロバートの計らいで急遽私が振ることになりました。演奏の前、少しだけ私自身の思いと祈りを口にさせてもらいました。この日、福島で、この曲を歌うこと、これは本当は特別なことなんかではなくて、いつだって私たちの中にあるはずの祈りです。ロバートの伴奏でメンバーと友に歌ったあの日の歌は、今も私の脳裏に焼き付いています。
 本番当日、リハーサルのデッドな音響に慣れていたこともあって福島市音楽堂の凄まじい残響に戸惑う場面もありましたが、結果この素晴らしいアコースティックに4日間磨き上げてきたサウンドが美しく融和していくのがわかりました。本番の演奏を(メンバーの視界に入るから迷惑かなと思いつつ)私は一番前の席で聞いていました。コンサートの間中私はアシスタントでもCo-Conductorでもなく、一人の聴き手となって彼らの声のシャワーを浴びていました。ロバートが根気強く伝えてきた言葉と音楽のつながりが、自然なサウンドの流れの中にきらめき、
メンバーひとりひとりの顔を見渡しながら、ついにプログラム後半の『Sukiyaki』では涙があふれて止まらなくなってしまいました。
 世界的指揮者ロバートとの濃密な時間は短かったが、しかしいつまでも続くような気がしました。それはこのセッションを通して、ロバートと私たちが、指揮者と合唱団、先生とアシスタントという構図を越えて、友であり仲間と呼べる関係になっていたからかもしれません。

*会報ハーモニーNo.177(2016年7月号)より抜粋

 ユース合唱団は普通の合唱団活動では得難い多くの特別な経験を与えてくれますが、それは単に海外の指揮者の指導を受けられるとか、日本中から集まった仲間と共同作業ができる、ということだけにはとどまりません。そこでは、音楽の途方もない広がりの入り口に立ち、凝り固まりがちな価値観はリフレッシュされ、最後には参加者それぞれに異なる気づきの「種」を受け取ることができるのです。若いうちにその「種」を持っているかいないかは、その後の音楽人生に大きな影響を与えるでしょう。私も若いころユース合唱団に参加して得た数々の「種」を今も大事に育て、時に人に分け与えたりすることで、飽きもせず音楽との幸福な付き合いを続けられています。